今回から数回に分けてミクロ経済学・マクロ経済学・計量経済学についての勉強法・教科書を紹介していきます。
対象とするのは主に大学院を目指す学部生です。もちろん公務員試験で経済学が必要な方にも参考になる情報があると思います。
第1回目はミクロ経済学です。
「ミクロ経済学とはなんぞや」といった蘊蓄を述べた情報は世の中にごまんとあるので、このページでは単刀直入に
・どのような勉強法がよいか
・どのような教科書を使えばいいか
を中心に説明していきます。
ミクロ経済学を学ぶにあたり
大学院に進んでミクロ経済学を学ぶ際に必要となる前提知識は微分くらいです。
それよりも定理の証明などが求められることが学部時代と比べ格段に増えるので、今のうちに慣れておくと良いでしょう。
そうなると中級の教科書では証明は省かれることが多いので上級テキストを読む必要性が生じます。
はじめのうちはそういった証明の過程が回りくどく感じるかもしれませんが避けては通れない道ですのでじっくり腰を据えて取り組んでいきましょう!
その点を除けばマクロ経済学のように学部と大学院とのギャップを感じることは少ないでしょう。
勉強法
大学院でのミクロ経済学の焦点は学部までの計算偏重から定理・補論の証明へと移ります。ややこしい微分が出てくるというよりは背理法のような案外基本的な 証明手順を使いこなす力の方が役立つと思います。また宿題の量・質ともに格段にレベルアップし文献も英語が多くなるので、大量の英語の文章を 読みこなす力も重要です。
学部生のうちから大学院の講義や友人との勉強会で鍛錬を積んでおくとよいでしょう。特に、大学院を志す学生は4年時の大半は割と暇だと思うのでそうした時 間を有効活用して「MWGの数学補論を読破する」の様な短期集中で完遂できて明確な目標を数多くこなしていくのが成功への近道かもしれません。
ミクロ経済学の教科書
Microeconomic Analysis by
Hal R. Varian
西村和雄先生の
ミクロ経済学や
武隈慎一先生 の
ミクロ経済学を学んできた方が次に進むのに最適な一冊。
情報の経済学やゲーム理論に関する部分は内容が薄いがその他の伝統的なミクロ経済学理論(消費者理論など)は説明も丁寧で定評があります。証明も背理法を 中心に展開されており自力で証明する力を養いやすい内容といえます。
ただし、本書のレベルでは現在の大学院レベルのミクロ経済学を学ぶには不十分であり学部時代に読了しておく方が望ましいでしょう。逆に言えば、このくらい の内容が学部生時代に理解できないと大学院入試は合格できても入学後に優秀な成績で単位を取るのは難しいと言わざるを得ないです。
話が逸れますが、4年間ある学部生時代と違い、2年間、さらにコア科目と言われるミクロ・マクロ・計量を1年目に取らなければいけない修士課程とでは キャッチアップに充てられる時間が大きく違います。ひとたび躓けばあっという間に置いてかれてしまうのが大学院です。躓かないために、そして躓い ても素早くキャッチアップできるように学部生時代から能動的な向学心が必要だと思います。
というわけで、本書を学部生時代に読了するのが大学院生への第一歩といえるでしょう。
Microeconomic Analysis [ハードカバー]
Advanced Microeconomic Theory by
Geoffrey A. Jehle
オークション理論や社会厚生など上記Varianで薄い項目が充実しています。また、2財モデルを中心に説明を進めるなど学部生でも十分読破できる内容だ と思います。数学的に分からない部分があれば巻末に数学付録がついていますし独学も可能な内容だと思います。
Advanced Microeconomic Theory [ペーパーバック]
Microeconomic Theory by
Mas-Colell, Winston, and Green
通称MWG。現在、ほとんどの大学院で本書をミクロ経済学の指定教科書としているのではないでしょうか。ゲーム理論等に関しては別書の方が詳しいですが、 ミクロ経済学に関する大抵の知識はこの教科書で学ぶことができると言っても過言ではないです。
また、各章の最後に収録されている練習問題も時間をかけて本章の内容を読み返せば解けるレベルから答えを読んでも分からないレベルの問題まで幅広く収録さ れております。練習問題の解答例はハードで出版されてもいますし、ネットでゴニョゴニョされていたりするので意識の高い学部生なら独学での挑 戦も可能です。また、この公式解答例はタイポが多いのでその辺りが感知できるようになれば大学院で躓くようなことはないだろうと思います。
コアコースが終わった後も辞書として活用できる色々と厚い一冊です。
Microeconomic Theory [ペーパーバック]
A Course in Microeconomic Theory by
David M. Kreps
MWGの弱点であるゲーム理論パートを補完するのに最適な教科書。説明もかなり丁寧で独学でも挫折せずに読み進めることができる内容となっています。
A Course in Microeconomic Theory [ハードカバー]
Game Theory by
Fudenberg, D. and
J. Tirole
Kreps同様定番のゲーム理論の教科書。ゲーム理論の入門書として有名な
Gibbonsの
Primer in Game Theoryの理論的に精緻化した内容といえます。構成なども似ているのでGibbonsで勉強したと いう方は本書も読みやすいかもしれません。
数学的には600ページもあるだけあってかなり厳密に扱われています。実社会へのゲーム理論の応用も解説されておりゲーム理論を専門にしたい学生なら目を 通しておいて損はない一冊だと思います。
Game Theory [ハードカバー]
ゲーム理論 by
岡田章
こと経済学に関しては上級書が手薄な和書ですが、本書は上記2冊のゲーム理論の教科書に負 けず劣らずの良書です。数学的な解説もがっつりなので和書だと思ってなめてかかると痛い目に遭うかもしれません。
最近発刊された新版では進化ゲームについての章が追加されさらに充実した内容となっているそうです。英語の教科書を読んでいて上手く理解できない時に翻訳 書代わりに利用する、なんて使い方も出来そうです。
ゲーム理論 新版
A Course in Game Theory by
Osborne, M. J. and
A. Rubinstein
ゲーム理論界における辞書として活用できそうなのが本書(ゲーム専門ではないので定かではありませんがw)。前述の3冊やMWGの上をいく厳密さで総仕上 げとして読むのにふさわしい(?)内容だと思います。
ただし、これをメインの教科書として使うには少々骨が折れすぎるのでピンポイントに読み込んだり証明の確認程度に使うのが効率的な勉強法だと思います。た ぶん、独学ではキツい内容だと思いますので、学友や教授の協力を仰ぎながらワイワイ勉強するのが良いと思います。
A Course in Game Theory [ペーパーバック]
というわけで、大学院に進むにあたり勉強しておきたいミクロ経済学の教科書たちでした。
[2回]
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